■ christmas tale 〜prologue/さるっこ編  - by mya-a.

ブリタニアの森のどこかに、いっぴきのさるっこがくらしていました。
ある日のこと、さるっこは、リンゴをとりにでかけました。
リンゴの木には先客のサルたちがいて、おしゃべりをしていました。
さるっこは、すこしはなれたところで、リンゴをとっていましたが、気になる話が聞こえてきました。
「ねぇ、青リンゴの話、知っている?」
「熟れるまえのリンゴなんじゃないの?」
「ちがうの。サファイアみたいにまっさおで、とてもキレイなんだって」
「フーン。おいしいのかしら?」
「さぁ・・でも、とてもキレイなんだって」
「このへんで見たことないけど。本当にあるのかしら?」
「イルシェナってところにあるらしいの。サベージっていう人たちがもっているとか」

聞いていたさるっこは、ドキドキしました。
そんなにキレイなリンゴがあるなんて、はじめて知ったのです。
そのとき、あたまに、おともだちのくまっこのことが思いうかびました。
もうすぐクリスマスです。クリスマスにくまっこにあげたら、どんなによろこぶでしょう!

さるっこは、リンゴをとるのもわすれて、家にかえって、おでかけのしたくをして、家をとびだしました。
そして、はしってはしって、ムーンゲートにつきました。
ムーンゲートは、とても遠くへいくことができる、ふしぎな青い光の門です。
さるっこは、ムーンゲートにむかって、さけびました。
「いるしぇなに、いきたいです!」
「・・・イルシェナーのどこへ?」とムーンゲートが答えました。
「いるしぇなです!」
「・・・イルシェナーのどこへ?」
「だからいるしぇなです!」
「・・・イルシェナーのどこへ?」
さるっこはすこしなやんでから、もういちど、さけびました。
「いるしぇなは、どこがあるの?」
「・・・慈悲」とムーンゲートがいいおえないうちに、
「そこ!そこにする!!!!」と、さるっこはさけびました。
ムーンゲートはブンという音とともに、さらに青くひかりました。
「イルシェナーの慈悲へ」
ムーンゲートの言葉を聞く前に、さるっこはムーンゲートにとびこみました。

青い光をぬけると、白い石でつくられた、小さな建物につきました。
さるっこは、キョロキョロしながら、建物をでました。すると、お花があちこちにさいた森が山にそってひろがっています。
「ふあ。キレイなところだな・・・きっとこの森にあるよ!」
さるっこは、げんきよく森のなかをはしりました・・・すると、大きな大きなネズミがいます!
「こんにちわ!ねずみさ・・・」
さるっこの顔の横を、矢がシュン!という音をさせてかすめました。
「あのあの」
大きなネズミはだまって、矢をまたじゅんびしています。
どうもおはなしあいはできなさそうです。
さるっこは、おおあわてで逃げだしたのですが、「キッキーキー!」とネズミがさけぶと、ほかにもネズミがでてくるではないですか!
「あわわわわ」
さるっこは、あわてて、森からそれる道へはしりだしました・・・しばらく走ると、大きな焚き火があって、何人か人がいます。
「あら。めずらしいおきゃくさまだわ」
さるっこはドキドキしました・・・人には、ひどいことをする人もいるからです。
「だいじょうぶ。なにもしないからこっちへおいで」
「ネズミにたべられちゃうわよ」
ネズミのことをおもいだして、さるっこは、プルルンとふるえました。
たしかにネズミにたべられちゃうぐらいなら、この人たちのところへいったほうがよさそうです。
「いいこだね。ほら、スープをあげる」
おもっていたよりも、いい人たちで、さるっこはおいしいごはんをごちそうになったり、おはなししたりしました。いい人たちは、ジプシーという人たちで、いろんなところへいってるというのです!それなら青いリンゴのことも知っているにちがいありません!さるっこはワクワクしながら聞きました。
「青いリンゴ・・・ね。このあいだも、2羽のニワトリがさがしにいったけど・・・帰ってこないわ」
「別の道から帰ったのかもしれないが・・・サベージに手をだしてはのう」
「ちいさいの、あきらめるということを知るのも大切ぢゃよ」
ジプシーたちは、さるっこに、あきらめるよういってきました。
「でもでも!青いリンゴのためにきたんだもん!サベージってどこ?青リンゴってどこにあるの?」とさるっこは、がんばって何度も聞きました。
やがて、一人のジプシーがため息をついてから、いいました。
「しかたのないコだねぇ。おしえてあげるが、あとはしらないよ?そこのどうくつをぬけると、黒い大きなお城がある。そこは邪悪なものしか住まない。見つかったら、おまえなど、あっというまに殺されてしまうぞ。だからお城にはちかよらず、まっすぐ南へむかいなされ。南には沼と、たくさんの火がみえる。そこにサベージたちの村がある。
そこでサベージたちは、青いリンゴをつかってなにかしているらしいが、なんせあやつらは話そうとしない。すぐにヤリをきらめつかせ、おどしてくる。話すなんてとうていムリだよ。だからちいさいの、どうしてもほしければ、こっそりしのびこんで、ぬすむしかないんだよ?」
「わかった!ありがとう、ジプシーさん!」
さるっこは、おれいをいうとすぐに、走ってどうくつにいってしまいました。
残されたジプシーたちは、あまりのさるっこのすばやさに、ぼうぜんとしてから、わらいだしました。
「まぁ、あんだけすばしっこけりゃ、なんとかなるだろ」

さるっこは、元気よくどうくつをとびだしたのはいいのですが、こわい顔をしたモンスターやサベージたちがたくさんいるうえ、南へむかうにつれ、どんどん、増えていきます。
見つかってしまうのは、時間のもんだいのようです。
さるっこは、見つからないように、木にすばやくのぼりました。
高いところからみると、近くに、たくさんの火がともされた道と、その先に竹でできたおうちがいっぱいみえます。きっとあれが、サベージの村なのでしょう。
「あそこかぁ・・・・ふあああ」
たくさんはしったうえ、ジプシーにごちそうになって、おなかいっぱいなので、さるっこは、ねむたくなってきました。
そのうえ、木はユラユラとゆれ、風もきもちいいのです。
「ちょっとおやすみ・・・むにゃむにゃ」
さるっこは、木の上でぐっすりとねむりました。

それから、なんじかんたったでしょう。
ほっぺたに、つめたい風があたるのをかんじて、さるっこは、目がさめました。
「ふぁ・・・」大きくノビをしてから、あたりを見回すと、まっくらです。
ちょっとおやすみしていたつもりですが、ねむっていた間に、夜になってしまったようです。しばらく様子をみていましたが、モンスターもサベージたちも、夜はねむっているようで、あたりはしずかです。サベージの村には火がユラユラとゆれて、道をてらしていますが、動くものは見えません。

さるっこは木から、そっと降りて、サベージの村へ向かいました。
みはりのサベージがいるかもしれないので、あかるいところをさけて、村をぐるっとかこむ壁ぎわをそろそろと歩いて、目立たない壁をよじのぼって、中へはいりました。
中にはいると、畑があって、竹でできた家があちこちに建っています。
さるっこは、そーっと、近くの家にはいって、あたりをみわたしましたが、青いリンゴは見つかりません。はこをあけたり、たなの上をみたり、ゴソゴソとやっていると、
「おい。なにしてるんだ?」とちいさな声がしました!
さるっこは、びくん!となって、あわててあたりを見ましたが・・・だれもいません。
「ここだよ。ここ。さわぐんじゃねーぞ」と、またちいさな声がします!
こんどはおちついて、あたりを見ると、テーブルのうえに、ちいさなオリがあって、その中に一羽のニワトリがいます。
「やっときづいたか。こっからだせ」
ニワトリが話していたのです。
「とりさん・・・?どうしたの?」
さるっこは、テーブルによじのぼって、ニワトリと同じぐらいちいさな声で、きいてみました。
「どうしたもこうしたも、つかまってるんだろーが!だしてくれたら教えてやるよ。青いリンゴだろ?」
さるっこは、あたまをたてに、ブンブンとふりながら、あわてて、オリをかじってこわそうとしました。
「おわっ。やめろ、そこにとびらが。それそれ、で、そこをひっぱって、そうそう」とニワトリに教わりながら、どうにかオリを開けて、ニワトリをだすことができました。
「ふう。やれやれだぜ」とニワトリは羽をクチバシでつついて、つくろっています。
「とりさん、青リンゴはどこ?」さるっこは、ドキドキしながら聞きました。
「まぁ、ちょっとおちつけや」ニワトリは羽をバタバタさせました。
「おちつかないと、だめなの?」
「おう。それよりオレがどうしてオリにはいってたかはなしてやる」
「はーい」
さるっこは、青リンゴのはなしのほうがよかったのですが、しかたなくニワトリのはなしを聞くことにしました。
「オレにはハニーがいてな」
「はにぃ?」
「ガキにはわからねぇか。なかよしのオンナのヒトだな」
「おともだちだね!」
「・・・で、そのハニーがな、サベージの村に、羽をとてもキレイな白にする秘薬があるってウワサをきいてな。ほしいってねだるもんだから、いっしょにきたわけよ」
「ふんふん」
「ココにきて見つけて、ぬすんで、けぇろうってときだ。サベージにみつかった」
「あらら。・・・あれ、はにぃさんは?」
さるっこは、あたりをキョロキョロしました。でも他にはだれもいません。
「薬をもってな。ゴメンネって、オレに青リンゴぶつけて、ヒトリでにげやがった」
「わるいコなんだね!」
「まぁな。ガキにはわからねぇだろうが、いいオンナってのはわるいもんなんだ。おぼえとけ」
「はーい!で、青リンゴ!」
「おう。隣の建物にある。ついてきな」
ニワトリは、ばさばさとテーブルからおりて、スタスタと歩いて、隣の建物にはいりました。さるっこは、うしろからついていきました。
「そこのテーブルの上みてみな」
ニワトリにいわれて、よじのぼると・・・キレイな青リンゴがたくさんおいてあります!
「わぁ・・・!キレイ・・・」
さるっこは、ウキウキとかばんに青リンゴをあるだけつめこみました。
「とったか?じゃ、ずらかるぞ」とニワトリは、すたすたとおもてにいってしまいました。さるっこはあわててあとをついて外にでたのですが、ニワトリが見当たりません!
「あれ?とりさん?とりさんどこ・・・?」
さるっこは、近くをさがしてみたのですが、みつかりません・・・と、そのとき、さるっこのしっぽを、なにかがふんづけました。
「ん?・・・・わわぁぁぁぁぁぁっ!?」
しっぽをふんづけていたのは、とても顔のおおきな、みたことのない生き物です!おもわずひめいをあげたさるっこを、なにもいわないでじーっとみています。
「このばかさる!なにさわいで・・・あぁ。こいつか」とニワトリがきました。
「と、とりさん!」
「サベージどもがおきてくる!こいつは、サベージのウマみたいなもんだな。リッジバックっていうんだ。おぼえとけ。おとなしいし、のるぞ」といって、ニワトリはリッジバックにとびのって、つないであるヒモをつつきはじめました。さるっこもあわてて、うしろにのりました。
「いっくぞー」とニワトリが、リッジバックのあたまをけとばすと、ものすごい速さではしりはじめました!
でてきたサベージたちも、びっくりしているようです!
「わぁぁぁぁぁぁ」とさるっこがさけんでいるあいだに、どんどんサベージの村からはなれていきました。
「と、とりさん、どこまでいくの?」さるっこは、リッジバックにしがみつきながらききました。
「しらん。こいつに聞け。ん?」
リッジバックはとつぜん、とまりました。
そこは泉で、ほかにもリッジバックがいっぱいいます。
ニワトリとさるっこがおりると、なかまのところへいってしまいました。
「かえりたかったんだねぇ」とさるっこがつぶやくと、
「オレらもかえるぞ」とニワトリがすたすたとあるきはじめました。

それから二匹はどうくつをぬけ、ジプシーのキャンプによって、おしゃべりをしてから森をぬけ、ムーンゲートにつきました。

「さる、おまえはこれからどこいくんだ?」とニワトリがききました。
「んとー。いえにかえって、クリスマスのおしたく。で、クリスマスにくまっことあそぶのー」とさるっこは、えがおでこたえました。
「ほぉ。んじゃ、オレもついてってやる」
「えぇ。はにぃさんのとこにいかなくていいの?」
「オンナはな、じょうにあつくないとダメだ。おぼえとけ」
「じょう?」
「そのうちわかるだろ。いのちのおんじんだし、ついってやるんだから、さっさといくぞ。どこいくんだ」
「えっと・・・トラメルの・・・どこだっけ・・・」

二匹は、そのあと、しばらくさわいでから、ムーンゲートをくぐっていきました。
クリスマスはもうすぐです。