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■ 霊性/Spirituality

「教養がない!だぜ、教養!!教養とかいわれてもな〜、でもさ、すげぇむかつかない?」
「確かになぁ・・・きょーよーねぇ。ララちゃんも言うようになったねぇ・・・」
サーペンツ・ホールドの飲み屋で、オレは昔からの友達のルグリスに愚痴っていた。
「言うようになったどころじゃねーよー。言いたい放題を突破して、いつでもケンカ売りっぱなし状態よ?マジやってられねー」
エールのジョッキを飲み干して、ドンとおいて、「オヤジー、同じのもう一杯ねー」と注文する。
「ほらまたぁ、飲みすぎると、ララちゃんが」
「あーもういいよ、マジ、ぶち切れた。もうね、別れます。今回は、ほんとぉ〜に、別れます。別れるから知ったこっちゃねぇー!」
ちょうどいいタイミングで、「あい、おまち!」と店員が追加のジョッキを持ってきた。
オレはジョッキを手にとり、ぐいっと飲んで、「ぷっはぁ」とため息をついた。
「あんまいいたくないんだけどさぁ、こないだ、ウチのやつのとこにララちゃん来てボヤいてたぜ」
「あーもう、別れるからいいのいいの〜もぉ、あんなヤツのことは忘れて、ぱーっと、ぱーっと、ね?ね?」
ルグリスが冷たい目で見るので仕方なく聞いた。
「・・・旦那の愚痴、外でいうようなの、女房失格ですよ・・・いつもすまんねぇ。で、なんていったの、ウチのは?」
「最近、オマエの仕草がオヤジくさいし、飲みすぎで腹もでてきたし・・・って。確かに言われてみるとそうだよなー」ルグリスはジョッキから酒を飲んだ。
「ハァーン。おまえまでそういうこというわけ!?さみしぃねぇ〜・・・ほんとにねぇ〜・・・ウチのも、自分のこと棚に上げまくってお空のかなたまで飛んでってるんじゃねーの?本当にもぉ、酒でも飲まないとやってられませんよ」オレはジョッキを飲み干そうとして、くらぁときて、そのまま、すぅっと意識が遠のく。

・・・カモメの鳴き声が聞こえる。
潮風の香りが鼻をくすぐると・・・胸元から不快感がこみ上げる。
「ぁー」と、起き上がりながらぼやく。頭がガンガンと痛む。
昨日、飲み屋で酔いつぶれて、そのままルグリスに隣にある宿屋に放り込まれ、そして朝。
いつも迷惑かけて、せめてつぶれないようにしないとなぁ・・・と後悔する朝。
ララのやつ、怒ってるだろーなぁ、もう帰りたくねぇなー・・・と悩んでいるうちに「ほらあんた!もうチェックアウトの時間だよ!」と宿屋の女将に追い出される朝。
いつもなら。追い出されて、仕方なく家に帰り、ララに怒られながら酔い覚ましを飲んで、ひと仕事しにでかけるのだけど。
こんな後悔しかないことを、何度も何度も繰り返すオレって、やっぱり教養ないよな・・・教養あったら、こんな馬鹿な真似しないよな・・・とか、ひどく落ち込んで。島をふらついて、ぼんやりと海を眺めていた。

「なに、たそがれているんだ、お前は・・・寝てるのか。コラ、起きろ」
振り返ると、ルグリスがいた。あたりは夕焼けで赤く染まっていた。木陰で海を眺めるうちに、いつのまにか眠ってしまったようだ。
「・・・ぁー」
「あーじゃねぇ、ほら、水」
ルグリスに渡された水を一息で飲み干す。
「ったく。どこいったのかと思ったら、こんなとこでおねむかよ!ララちゃん心配して、ウチに来たぞ」
「いろいろと、いつもすまんねぇ」
「あー、本当にな。ララちゃんには、すごい腐り物件見つけたから、急な話で悪かったけど、張り込んでもらってるって、言っといたからな」
「悪いナァ、うまいこと言ってくれてありがとな」
「うまいこと、じゃなくて、マジで張り込みいくぞ」
「え?」
「ララちゃんには、今夜も帰れないって伝えてあるから、安心しろ。さ、行くぞ」
ルグリスに引きずられるようにして、現場に行く。
「お前は荷物狙いで頼むわ。オレは土地を狙うからな。ここらにいろ。寝るんじゃねーぞ!じゃ」と手短に言って、ルグリスは姿を隠した。

家主がいなくなって、ある程度時間が経過すると、家は傷み始める。そのまま家主が帰ってこないと、家は崩れ落ちる・・・そのことを『腐る』という。家に置いてあった荷物は放り出されて、拾えるようになり、家がなくなると、土地が空くので新しい家を建てることもできる。
ライバルがいれば争奪戦になるが、基本的には崩れ落ちるのを延々と待ちつづけ、勝負は一瞬なので、ひたすらだるい。
いつもなら、適当に逃げるのに・・・今日は分が悪すぎる。
仕方なく、ぼんやりと家を見つめる。ルグリスが「すごい」というだけあって、大きな家だ。
こんな大きな家があっても、どうでもよくなるときがあるんだなぁとか、家主はどこいっちゃったのかなぁとか、ぼんやりと考えていた。
大きな家のためか、ライバルが増え始め・・・そして夜明けにまだ時間がある、夜半過ぎ。家が大きなため息をつくような音をして崩れ落ちた。
オレは慌てて、コンテナをヒトツ、奪い取った。中にはたくさんのアイテムが入っている。
家の跡地には、もう誰かが新しい土台を設置していた。
「くっそぉー」とルグリスがやってきた。「ダメだったわ。ライバル多すぎ。おまえは?」
「一応、なんかとれたな」「を?とりあえず、サーパンツいくか。いいもんだったら祝杯だな!」
サーパンツへ移動して、銀行の2階にあがってから、ルグリスにコンテナを渡す。
「・・・記念アイテムの山じゃねーか。売れるかなぁ・・・はぁ」ルグリスはコンテナをポイと放り出した。オレは中からワンドを一本とりだした。
「ワンドもゴミなのかぁ。せつねぇ時代だなぁ・・・ところでこれって、魔法とかでないの?」
「それか?そいつは花火ワンドだ。叩いてみな」
・・・火の玉が飛んで、キラキラとした花火があがった。
「うお。おもろいな、これ・・・」何度も打ち上げて・・・ふと、思い出した。


「え?トランメルにも神殿があるの?」
ララに出会ってからまだ、そんなに経っていないころだった。
二人でイルシュナに狩りへでかけ、帰りのムーンゲートでのことだった。
「慈悲とかの意味ってなぁに?」と言いだしたララに、「徳の神殿の名前だよ。アンクがあるだろ?」と教えた。すると「神殿ってイルシュナにしかないのね。トランメルとかフェルッカは町の名前だし」と言うので、「あるじゃないか」と返事をしたら、ララは知らなかった。
「じゃぁ、行ってみようか」といって、ブリテンのムーンゲートから南へ旅して、霊性の神殿へ行った。白い大理石の神殿は池の上にあって、花火があがっていた。
「わー、きれいきれい!はじめてきたー!」
「島に行ってみたいな」
「om om om・・・っていうの?わわ、本当にいけた!きれいだねー」
「すごいいろんなこと知ってるのね!すごいすごい!」
ララはキラキラとした目をして、尊敬のまなざしでオレのことを見ていた。


・・・あのときと、同じ花火だ。
ずっと忘れていた遠い日のできごと。
あのころ、ララはひたすらいろんなことを知りたがって、オレに聞いては感心したりおもしろがったり・・・。月日がたって、ララも変わったのかもしれないけど、オレはあのころはもっと、ちゃんといろんなことを知ろうとしていたし、世界を隅々まで冒険しようとしていた。
でも、いつからか、面倒になって。過去の知識で困らないように生きて。
新しいレアを知らなくて「なにこの変なの?」とララに言って、「教養がない」と罵られるまでになって・・・。

「これさぁ、花火ワンド、全部もらってもいいか?」
コンテナの荷物をキレイに並べているルグリスに声をかけた。
「かまわないよ。何に使うんだい?」
「もうすぐクリスマスだから、ララにあげようかな、と」
「ヤングチケットの花火ワンドだから、通にはたまらんな。最近は6周年ものが多いし・・・6周年とは花火が違うし、キレイなんだぞ」
「いろいろあるんだな〜。昔のことを思い出したよ」
花火ワンドをポーチにいれて、「ほらよ」とルグリスがくれた。「ありがと」と受け取った。
「まー、なんにせよ、仲直りする気になったのはいいことだ。ウチはクリスマスどーすっかな・・・」
ルグリスは悩みはじめた。

ララに、この花火を見せたら思い出してくれるかな・・・遠い日のこと。
思い出してくれたらきっと、素直に笑える気がする。ただそれだけ。
でも、何を馬鹿なこと言ってるの、って怒り出すかもしれないけど、それはそれでいいかもしれない。

どんなクリスマスを迎えるのだろう。できれば、花火に祝福されますように。